自分にできることを一つずつやることが次なる展開へと結びつく

かれこれ十数年前、事故の後始末をしながら、お先真っ暗と感じていた頃、三カ月限定で分譲マンション販売の手伝いをしたことがあります。

後遺症によって、何ができるのか、何ができなくなったのか見定めようと思ってのことでした。

面白いもので、今の私が「お先真っ暗」と思っていた過去を振り返ると、将来への伏線があちらこちらにあり、自分にできることを一つ一つやりながら前に進んでいるように映るのです。

マンション販売の手伝いを終えて七か月が経つ頃、アイホージュの立ち上げを決めるのですが、仮に、事前にそれが現実になると言われたとしても、全く想像がつかないほど、当時と未来の状況は乖離していました。

自分がやりたいこと自体わからないし、そもそも、どうやったら立ち上げに至るのだろう。

EFTを積み重ねた今だから思うのですが、当時の私がお先真っ暗と感じていたり、自分の中でつながっているはずの過去と未来が乖離していたり、自分がどうしたいのかわからないと感じていたりするのは、自覚なきまま(他者から承認が得られる)バリバリ動ける理想の自分を良かれと捉えていて、それが実現することにばかり意識を向けていたからです。

そのため、本当に必要な「実際に自分の現実を一つ一つ作ること」に対しては「こんなことをやっても大したことがない」と感じて、何気なくやり過ごしていました。

その流れで決めたマンション販売の手伝いは、初めてのEFTタッピングのセッションを受ける少し前のことなのですが、ここで私は、EFTタッピングもどきのようなことをしていたのです。

目次

自分にできることって何かを掘り下げる

私の仕事は、いくつかの部屋を営業が完売させるための補佐でした。

お客様を案内することはあっても、実際に販売をしていた訳ではありません。

雇われてすぐに、営業から「空いている全ての部屋を見てきて、感想を教えて」と言われ、メモ帳とペンと渡された私は鍵をもって各部屋へと出向きました。

一つ目の部屋に入り、奥へと向かって進み、窓の外を眺めた時、過去に売れなかったであろう理由が何となくわかった気がしました。

伊藤

この景色はないわー。

売れないと私が感じた理由やいわゆるネガティブと呼ばれる思いをひとしきりメモした後、ふと我に返りました。

私は「完売」のために雇われたのであって、売れない理由を羅列するためだけに、ここにいる訳じゃないんだよな。

・・どうしたら売れるんだろう。

前述しましたが、実際に販売をするのは営業です。

補佐の私が販売のためにできることって、そもそもあるのだろうかと思った時、あることに意識が向きました。

それは、売れた部屋も、残っている部屋も「同じ建材」を使っているということ。

何階にあるのか、広さや部屋数、採光や窓から見える景色の違いなどはあれど、キッチンも、トイレも、お風呂も、床も、壁も基本的に同じ。

この時点で、私が売れない理由として掲げていたのは主に外側の景色。

だから、部屋自体をマズイと感じていた訳ではないのです。

もしかしたら部屋は自信を失っているのかもしれない

過去に、何人もの見学の方がこの部屋をマイホーム候補と考えて訪れては中に入り、景色を眺めて「ここじゃない」と通り過ぎて行ったのだろうか。

伊藤

部屋は何も言わないけれど、私だったら多いに傷ついて、自信を無くして、もう売れなくていいですなん言いそう・・。

そんなことを考えながら、何気なくキッチンを指でなぞった瞬間、ざらっとした感触を覚えました。

改めて部屋を回ると、一見、綺麗なのだけれど、手を触れるとざらつきや埃があったり、小さな汚れが目についたりします。

これまで販売に携わっていたのは男の人だけだと聞いていたので、埃や汚れは見落としているかもしれないと思いました。

なので、その後、営業に許可を取って、ひとまず売れていない全ての部屋を掃除することにしたのです。

売れないのは部屋のせいじゃない

私は掃除しながら、部屋に話しかけました。

伊藤

今まで売れずに自信をなくしているかもしれないけれど、売れないのは景色の問題で、あなた(部屋)のせいじゃない。

売れた部屋と同じ材料を使っているのだから、売れると自信をもってほしい。

あなたが住んでほしいと思う人が見学に来たら「私を買って」と伝えてちょうだい。

だいたい、三日おき位に掃除をしていたでしょうか。

部屋の中は私一人なので、毎回、ブツブツ話しかけていました。

アヤシイし、そもそも効果があるかどうかもわからないし、傍から見たらアブナイと自覚していたので、このことを誰にも話しませんでした。

部屋が売れ始める

そうこうしているうちに、少しずつ部屋が売れ始めました。

マンションには売れる時期があると言います。

その時期に突入していたこともあって「時期が来たから売れ始めた」と思っていたのです。

そんなある日、営業と管理人さんとの三人で、スナックにてお酒を飲む機会がありました。

お二人に話すのも慣れ始めていた私は、ここで初めてネンブツ掃除をしていることを告白したのです。

笑われてアブナイ人認定されるのかと思いきや、お二人ともに真剣な眼差しで「明日から毎日やって!!」と言うではありませんか。

こうして私は、最後の一部屋が売れるまで、毎日ブツブツ言いながら掃除をすることになったのでした。

自分にできることをやって思った二つのこと

ある日、部屋を購入し、新しく生活を始めた方と行き会い、話をする機会があったのですが、その様子から私が思ったことが二つありました。

一つは、同じ部屋を見ても、思い感じ考えることは人それぞれ。

「あの景色がNG・・」と私が思ったとしても、それは主観に過ぎず、全ての人がそう思う訳じゃない。

景色以外にそこに住むメリットはたくさんあったのです。

もう一つは、お客様と部屋がうまくマッチングしたのだという、喜び。

本当にそうだったのかは、私には知る由もないのですが、部屋が住んでほしいと思ったお客様が見学にいらした時に「私を買って!」って堂々とアピールする姿が思い浮かんだのです。

アヤシイと思いながらも、やっていたネンブツ掃除って、今提供しているEFTそのものじゃない?と気づくのはずっと後のことです。

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