この話は、前回からの続きです。
現在の、軌道修正術に近い内容を提供するきっかけを得たのは、2009年の秋。
アイホージュを立ち上げ、半年ほど経ったこの日、私はクライアントさんとのセッションを通じて、重要なことを学びます。
思い込みはなくすのではなく、ありのまま認める。
ありのまま認め、自分を満たすことによって、初めて事実と感情を分けられるようになり、物事への根本対応も取れるようになる。
この方法は、現在も重宝していて、軌道修正には欠かせないものとなっています。
あの日、クライアントさんが、思っていることをそのまま仰って下さったことに感謝するばかりです。
思い込みはなくすのではなくありのまま認めるのはなぜ?
今でこそ、ありのまま認めようと謳っている私ですが、当初は「思い込みをなくす、手放す」という表現を使っていました。
その後、セッション内容を言語化・知識化する中で、気づいたのは
ということ。
他人軸の状態で、必ず起きる現象です。
このままだと、ヒト・モノ・コトに対し必要な対応が取れなくなり、結果的に自分や周囲を傷つけてしまうのです。
でも、思い込みをありのまま認めていくと、事実と感情が分けられるようになるため、ヒト・モノ・コトに対し適切な対応が取れるようになります。
思い込みって、なくすことにばかりに意識を向けがちです。
でも、なくすって、どうやって?
それに、なくしたからといって、必要な対応が取れる訳ではないのです。
そのことを知らないでいると、いつまでも、なくすことに執着するばかりで、肝心なことができなくなります。
これは気を付けなければなりません。
なので、思い込みはなくすのではなく、ありのまま認めようと謳っているのでした。
思い込みはありのまま認めると事実と感情を分けた対応が取れる
思い込みはありのまま認めると、事実と感情を分けた対応が取れる。
このことを、クライアントさんが実践できるように、セッションを進めるプロセスを私・伊藤が会得する機会は不意に訪れました。
EFTタッピングのセッションが終わりに近づく頃、クライアントさんから、このような訴えがありました。
ネガティブな感情や思考を、ありのまま認めたら、気持ち良いことはわかった。
過去の出来事が、現在に反映しているのもわかった。
でも、EFTをやっても、今、私が抱えている問題は、何も変わっていない。
このままセッションを終えてしまったら、結局私は、今までと同じことでぐるぐる回ってしまう。
ここまでのお話を聞いた私は、どうしたらいいのだろうと思ったものの、良い案が浮かぶ訳もなく・・。
苦し紛れに、クライアントさんの仰る問題が何なのかを、もう少し詳しく伺うことにしたのです。
原因と問題と解決方法を見極める
具体的な内容は伏せますが、お話を聞いているうちに、原因と解決策が見えてきました。
原因は、大切な人とのやり取りにおいて、クライアントさんが
- お相手に伝えたいと思っている内容
- 実際に、お相手に伝えている内容
が全然違っていたこと。
だから、クライアントさんが求めているものを、お相手は差し出せない。
当然、クライアントさんも受け取れない。
大切な人との関係において、辛さを感じる状態になっていたのです。
これが私の判断であり、問題への対応方法でした。
ところが、一筋縄ではいかなかったのです。
思い込みがクライアントさんにとっての事実になっている
嬉々として、上記の内容をクライアントさんに話した所、
私、ちゃんと伝えています。
そう仰るばかりで、全然納得していない様子が伝わってきます。
もう少し、お話を伺っていくと、ご自身が話した内容が、お相手へ確実に伝わっていると思い込んでいることが、クライアントさんにとっての「ちゃんと伝えている」という事実となっていたのです。
そのため、クライアントさんが感じていた下記の内容が、クライアントさんにとっての事実となっていたのです。
何度も話しているのだから、自分が伝えたことを、相手は絶対にわかっている。
なのに、こちらが求めていることを何もやってくれない。
周りから自分を大切にしてもらえない。
この時点で、クライアントさんにとって問題や原因は、外側の「何度も伝えているのに、全然やってくれないお相手」にある訳です。
何度も伝えるという対策は、すでに取っている。
だから、クライアントさんにしてみたら、成す術もない状態です。
- 自分は絶対に言っていると思い込んでいる
- お相手に、話した内容がひとつも伝わっていないという伊藤の説明に対し、全然納得していない
- 周りから大切にしてもらえないと感じている
のだから、視点や思考が変わらないまま、クライアントさんの言動だけを変えるのは無理があります。
それに「さんざんお願いしているのにやってくれない」ので「相手から大事にされない」と感じ、傷ついていたクライアントさんにとって、私・伊藤が提案した、お相手に話す内容は「怖くて言えない」または「負けたと感じて言いたくない」と感じてもおかしくありません。
お願いして断られたり、やってもらえなかったりしたら、さらに傷ついて立ち直れないかも知れません。
出来事は違えど、私もさんざん経験してきたことです。
クライアントさんのお気持ちは、痛いほどわかりました。
思い込みをありのまま認め事実と感情を分けた対応を取れるようにする
クライアントさんが全然納得していなくて、言動を変えられない思考状態だとわかっているのに、解決方法(言動の変え方)だけを提示し、とにかく思い切ってやってみてと話してセッションを終えるのは、無責任だと思いました。
なので、かつて自分に対しそうしてきたように、クライアントさんが頭でも、気持ちの上でも、納得した状態で、ご自身の意志で言動と現実を変えられるよう、EFTタッピングを使うことにしたのです。
クライアントさんの視点が内側を向き、思考の上で、事実と感情を分けられるようになれば、言動も変えようと思えるはずです。
得られる結果もこれまでとは違うものになるのですから、やらない手はありません。
伝えたつもりで伝わっていないことに自ら気づく
「ちゃんと伝えているという内容が、実は伝わっていない」
まずは、このことに、クライアントさんが自らお気づきになるよう、ヒアリング内容を使って、セットアップフレーズやリマインダーと呼ぶ言葉を作成しました。
自ら気づくというのがポイントです。
どれだけ人から説明を受けたところで、ご本人が納得しなければ、言動を変えることにも、結果を得ることにも結びつかないのですから。
事実と感情を分けられるように、EFTタッピングをしている途中、思い込みに気づいたクライアントさんが笑いながら
あ、私、言っていないですね!!
と仰ったので、次の課題に着手します。
思っていることを絶対に言えない
私・伊藤が、クライアントさんに、お相手に伝える具体的な内容を、改めて提示します。
それに対し、クライアントさんは「自分がやって欲しいと思っていることを、お相手には絶対に言えない」と感じていることをありのまま認め、掘り下げながら事実と感情を分けていきます。
私、もう言えます!
という状態になったので、仕上げに「伝えても大丈夫だ」というEFTをし、セッションを終了。
翌朝、クライアントさんから、必要なことをお相手に伝えたこと、望んでいたものをたくさん得られ、幸せを存分に味わっている旨が書かれたメールを頂きました。
前日に取り組んだことが別のクライアントさんとのセッションで役に立つ
その日の午後、出来事は全く違うのに、同じつまづきが生じていた、別のクライアントさんとのセッションがありました。
事例紹介で登場する、Mさんです。
前日のクライアントさんが取り組んだ内容は、Mさんのセッションで多いに役に立ったのです。
これ以降、一回あたりのセッションは、6時間で行うようになりました。
他人軸から自分軸に軌道修正する場合、視点・思考・選択・言動を変えることで、これまでとは違う結果を得るのですが、多くの方が、思っている以上に、細部でつまづきを覚えていることに気付いたからです。
終わりに
思い込みはなくすのではなくありのまま認めると、事実と感情を分けた対応が取れる。
このことを教えて下さったクライアントさんに、とある場で再会し、「私、あの時のこと、忘れません。」と伝えられたのは、セッションから十年が経っていました。
クライアントさんが何と仰ったかは、私の内に秘めておきたいので、ここには書きませんが、セッション提供者冥利に尽きる思いでした。